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【おすすめの読解練習法】内容予測練習

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皆さんは中学、高校で英語を勉強したときに、読解ストラテジーを習いましたか。

私が高校生だったのはずいぶん前のことですが、習った記憶がありません。高校卒業後に、パラグラフリーディングや読解ストラテジー的なものに触れ、「こういうのをもっと早く知りたかった」と思いました。今でもたまに本屋さんの英語教材コーナーに行きますが、今は「読み方」をテーマにした教材が多数ありますね。

今回のテーマは読解ストラテジーに関するものですが、長文になってしまいました。目次からお好きな場所へ飛ぶことができます。

日本語教育でも「読み方を学ぶ」ための教材が出版されています。

これらの教材では、様々なタイプの読解ストラテジーを学べるようになっています。

ここでちょっと用語の意味を見てみたいと思います。冒頭から何も説明せず「読解ストラテジー」と書いてしまっていますが、実際のところ幅広いものを指す用語です。以下、書籍から引用させていただきます。

読解ストラテジーには読み手の背景情報を使って推論をするストラテジーや、読みながら全体の内容やこれから読むところについての仮説を立て、それを検証するストラテジー、読み取った情報や内容を統合するストラテジー、文章構造を使って読みの展開を予測したり、情報を統合するストラテジーなど、読みを効率的に進めるための様々なストラテジーがあります。また……。

Amazon.co.jp: 学習者を支援する日本語指導法I 音声 語彙 読解 聴解 : 畑佐 由紀子: 本 p.170
※太字はサイト管理人による

こちらの本では、32個ものストラテジーが「主な読解ストラテジー」として挙げられています。表にまとめられていて、とてもわかりやすいです(pp.170-171)。

読解ストラテジーには様々なものがあるわけですが、授業の中でどう扱っていけばいいのでしょうか。個人的にはストラテジー指導の初期段階に扱うものとして「予測」がちょうどいい気がしています。というのは、接続詞など注目すべきものがわかりやすく、ストラテジー使用の効果を実感しやすいと感じているからです。

『速読の日本語』でも、以下のように「重要な練習の一つ」として挙げられています。

内容予測の練習は速く読むことの中で最も重要な練習の一つです。 次に書いてあることを予測しながら読むことは、読むスピードを速くするのに大変効果があり、また、読解力も高めます

『速読の日本語』p.68
※太字はサイト管理人による

次のセクションで、本題の「予測」に入ります。

私たちは文章を読むときに、先を予測しながら読んでいると言われています。

参考文献
論文:文の理解における予測について | CiNii Research
書籍:『「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける)』
 


予測といっても、複数の段落を含む文章における予測もあれば、一文や短文での予測もあります。今回、取り上げるのは、後者のような狭い範囲での予測です。

たとえば「なぜなら」と出てくれば、「次は理由が来るはず」と予測することができます。次の場合はどうでしょうか。

① そのプランでは予算オーバーだった。そこで
② マラソン大会に出場するからには

①は「解決法が説明されるのだろう」、②は「決意が来るのだろう」と予測することができるのではないでしょうか。このように文章には先を予測する手がかりになるものが含まれていることがあります。これを読みに生かさないのはもったいないです。

内容予測は、外国語を読む場合にも役に立ちます。体感していただくために、ChatGPTに英文を作ってもらいました。どんなふうに理解しようとしているか観察してみてください。

Access to quality healthcare should be universalized so that socioeconomic disparities in health outcomes can be minimized.

Waste management systems need to be revamped so that we can address the growing problem of plastic pollution in our oceans.

いかがでしたか?私の場合はこんな感じでした。

①「so thatがあるから、次は目的が書いてあるはず」と予測

②「目的」が書いてあるとわかれば、その部分は一語一語にこだわらずに読める

③前後の関係性がわかれば、語の推測もしやすい(revamped)

一言でいうと効率的に内容をつかめている感じです。これは私の感覚ですが、『「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける』を読み直していて、ピンとくる説明に出会いました。

予測というのは、今読んでいる内容の延長線上に後続文脈を想定することで、次に来る内容を限定する行為です。

—『「読む」技術~速読・精読・味読の力をつける~ (光文社新書)』石黒 圭著 https://a.co/hd3nJ91
※太字はサイト管理人による

この石黒先生の説明をお借りして私の感覚をとらえなおすと、so thatに注目することによって、「次は目的!」と限定することができた、という感じでしょうか。限定できるから、効率的に読めるということなのかなと思います。

自分の読みのプロセスを観察するのは難しいかもしれないので、ここでちょっと聴解の話をします。読解よりも聴解のときのほうが、予測を実感しやすいように思います。私は家事をするときに、Voicyやaudibleを「ながら聞き」していますが、その際に「自分が予測してるなー」と感じることがけっこうあります。


たとえば、ちきりんさんのコンテンツでは、「なぜなら」がけっこう使われている印象があります。このマーカーが出ると、「理由が述べられるのね」と展開をイメージでき、脳のリソースを節約できている感覚があります。

また先日は、こちらの作品を聴いていたときに、以下の部分で、自分が展開を予測しているなと気づきました。

・もちろん(譲歩)

・いくら(譲歩)

・むしろ

どっぷり内容に集中せず、料理を焦がしたりせずにすんでいるのは「予測」のおかげかもしれません。

予測については論文、専門書でも言及されています。また、予測練習ができる教材もあります。以下では、それらを紹介します。

まずは教材からです。

私が内容予測練習に出会ったのは、たしかこちらの本の初版でした。

「第1部 基本技術編」と「第2部 実践編」にそれぞれ、内容予測練習があります。

こちらの教材は学習者向けですが、予測以外にもいろいろなストラテジーが紹介されていて、教師が読解指導の方法を学べる1冊でもあります。

こちらの教材にも、様々なタイプの練習がありますが、そのひとつに「後ろに続くものとして、もっともよいものを選んで○をつけなさい。」という問題もあります。

こちらも、読解指導の参考になる1冊だと思います。

次に専門書を紹介します。

第2部の「聞くための日本語教育文法」「読むための日本語教育文法」で予測が取り上げられています。前者は聴解に関するものですが、読解指導にも参考になると思います。1文単位の予測や、談話単位の展開予測について言及されています(pp.138-142)。

そして、予測練習教材の例として、以下のような後続文完成テストが挙げられています (pp .140-141)。

・けさの新聞によると__________。
・どうせさんざん悩んだあげく__________。 

「読解ストラテジー」について、もっと知りたいと思った方のために論文情報も挙げておきます。論文には先行研究がまとめられているので参考になります。

ストラテジーを使った読解授業の成果 | CiNii Research

読解ストラテジーの定義を探していたときに見つけた論文です。年代を追って読解ストラテジーについての先行研究がまとめられていて、頭の整理ができました。

文の理解における予測について | CiNii Research

こちらの論文では「予測とコロケーションの関係」が述べられています。コロケーションが予測と関連しているとは意識したことがなかったので、勉強になりました。

最後に、「予測」という視点で、文法指導について考えてみたいと思います。

『完全マスター』には3択問題が多くありますが、その中には、空欄の前の表現が目印(マーカー)になって、後半の展開が絞れるものもあります。たとえばこんな問題です。

なかなか売れないので値段を下げたところ、(      )。p.92
a あっと言う間に売り切れた  b 全部売り切れるはずだ  c 全部売ってしまった


漫画なんて、(      )。p.98
a 大切にとっておけ  b たくさん読んでみろ  c 捨ててしまえ

こういったものは、予測練習と考えることもできますね。単に問題をこなすのではなく、読解ストラテジーとして活用できることを意識づけしていくことも大切ではないでしょうか。

「予測」という視点を持つと、文法指導もまだまだ工夫の余地がありそうです。

今回記事を書くにあたり、改めて書籍や論文を見たりしましたが、「予測」はやはりおもしろいです。

今、内容予測練習ができる読解教材を作っていて、近々公開予定です。

将来的には「予測練習ができる聴解教材」も作ってみたいと考えています。自動翻訳の精度が上がっているとはいえ、聴解に関して言うと、リアルタイムでの理解を求められる場面は多いと思います。そういう場面で予測の役目は小さくない気がします。

2024年8月7日 記

タイトルを変更し、新たな記事として公開しなおしました。上記で言及したオリジナル「内容予測練習」はこちらで紹介しています。