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【文法】定番参考書を読んでも解決しないとき

表現文型の意味・用法を調べるときに、どんな参考書を使われていますか。

私が主に使っているのは以下のものです。

教師と学習者のための日本語文型辞典

どんなときどう使う日本語表現文型辞典

中級日本語文法と教え方のポイント

中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック

これらの参考書は、多くの先生がお使いのことだと思いますので、勝手ながら定番参考書と呼ばせていただきます。

どの参考書にも本当にお世話になってきましたが、使う機会が一番多いのは、くろしお出版の『日本語文型辞典』です。

私が本格的に中上級を教え始めたときにはこの本は既に出版されていましたが、この辞典がなかった時代、先生方はどうされていたのだろう、と過去に思いを馳せたりもします。今はいろいろな選択肢があり、ありがたいです。

さて、今日は定番参考書を複数当たっても、スッキリしないときに使える参考書を紹介します。たとえば、こんなときです。

・学習者の作った文が「なぜ非文なのか」分からないとき

・やさしい日本語への適当な言いかえが見つからないとき

・用法ごとの詳しい説明がほしいとき

日本語文法辞典』シリーズ The Japan Times

全3冊のシリーズですが、私は基本レベルと中級レベルの2冊を利用してきました。

文法説明が英語で書かれている辞典で、例文も豊富です。

英語が使えない教室環境であっても、英語での説明を参考にしながら、やさしい日本語での説明方法を考えることがあります。

教え始めたころ、「せっかく」「わざわざ」といった副詞を日本語だけで説明するのは難しいなぁと感じていました。

たとえば、「せっかく」について、本書には以下のような説明があります。

some situation which seldom occurs has now occurred and one can either make use of it or, to one’s regret, cannot make use of it.

日本語基本文法辞典 p.392

このような英語での説明を参考にしながら、やさしい日本語での説明のしかたを工夫することができます。

それから、英語話者向けに書かれたことも影響しているのかもしれませんが、他の参考書ではあまり見ないようなことも言及されていて、参考になります。

『実践にほんご指導見なおし本 機能語指導編』アスク出版

文法的な解説に終始せず、交流分析の観点から発話時の感情や意図を再確認していただくことを目指しました。

本書について p.8

著者の方々のこのような思いが反映されていて、話し手の気持ちやニュアンスに関する説明があり、参考になります。

また、多くはありませんが、導入時のヒントになるような図もあります。

p.130 ~といっても

p.143 ~として

p.187 ~のもとで、もとに

p.176 ~に対して、~にとって

これらを参考に、板書やスライドを工夫することができます。

『複合助詞がこれでわかる』ひつじ書房

ずいぶん前に図書館で見つけた本ですが、手元に置いておきたいと思い、購入しました。今、Amazonで見てみたら、高値が付いていて驚きました。メルカリなどで出品されているでしょうか?

「にとって」「として」「に対して」「に基づいて」「を問わず」「にかかわらず」などの複合助詞について、詳細に記述されているので、用法の全体像をつかむのに役立ちます。また「教える時の注意点」も書いてあり、参考になります。

さて私が気に入っている点を2点挙げます。

1.細かな用法分類がされている

たとえば「として」には、以下のような説明があります。

「XとしてY」は、大きく分けると次の2つの意味を表す。

(a) Xという資格・立場・名目で、Yする。

(b) Xという観点から見ると、Yだと言える。

p.79

さらに、意味・用法として、6つのタイプが挙げられています。

・私は留学生として日本に来た。

・日本人は米を主食として食べている。

・京都は歴史の古い町として有名だ。

・努力するのは人間として当然のことだ。

・会員は義務として会費を納めなければならない。

・政府として、対策を考えたい。

pp.90-91

どこまで細かく分類して学習者に提示するかは別にして、教える側が、複数タイプあることを把握しておけば、提示する例文の選択などに役立ちます。

「別用法のものを提示して、学習者が混乱してしまった」といった事態を招くことも避けられます。

2.「どんな言葉と使われるのか」の説明、具体例がある

例として、「Xに基づいてY」と言う表現を取り上げます。

以下のようにXにくる要素例、Yにくる要素例が多数、挙げられています。

Xにくる要素例:資料/調査/取材/報告/報道/記事/説明/分析/記録……

p.125

Yにくる要素例:判断する/作成する/決定する/計算する/算定する/提案する……

p.127

たくさん例を提示したほうが効果的な場合もあると思います。

そんなときに、これらの情報は助かります。

今回は、お助け参考書3冊を紹介しました。

皆さんにとってのお助け参考書は何でしょうか?